無理、俺にして

「ちょっと、キミのこと甘く見てた。ごめん」

「……え?」


折原くんの手が、私の頭を優しく撫でてくれた。


「俺さ、こう見えて結構モテるのね」

「う、うん」


それは、ちゃんとわかってた。
折原くんという人間を知った日から、見つけたその瞬間からわかってた。


「『喉元過ぎれば熱さを忘れる』って言葉、あるでしょ」

「うん」

「……あー、やっぱいい」


……え。

えっ!?


「なんかすごい貴重なお話が聞けそうだったのに!! なんでやめちゃう、ん」


ちゃんと、真面目に話してよ。

だいたい折原くんはいつもそう、人の話ばかり聞いて、自分の話は全然しないんだから!!
こういうときくらい、ちゃんと折原くんの話が聞きたいよ。

ちゃんと教えて、と言いたくて。

体を離したときには、


「……っ」


唇を、奪われていた。

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