無理、俺にして
*紫乃side*

胸に顔をこすりつけて泣き出されて
ちょっとどうしたらいいか分からなくて、自分がださくて情けなくなる。

いつか、教室の前でこうやって泣き出すこいつを見たときも、ちょっと焦っていた。

困る。

こんなに大切にしたいと思えた女の子、初めてだから。


「……ゆめ」

「……」


両手で、大粒の涙で頬をぬらす彼女の顔を挟んで、そのままこっちを向かせる。

ちゃんと泣き顔も見ておきたいなんて言ったらキミは、怒るかもしんないね。

順番は守りたかったけど、最後の最後で我慢できなくてごめん。


「俺の彼女になって」


そして、ノートに書いてあることも
それ以外のことも
それ以上のことも

他の誰でもない、俺とお前の二人で。


「ほんで、ゆめがしたいこと全部、俺としよ」

「~……っ!!」


くしゃっと顔が歪んで、細められた目から涙がまたこぼれる。

指でどれだけ優しく拭っても終わりがない。

いざ泣かれると焦るくせに、
俺の言葉で、俺のことでこんなふうに泣いてくれる彼女が、かわいくて愛しいなんて。



これは、夢なんじゃないかと思う余裕もないくらい


「折原くん、大好き……!!」

「っ、うん」


……幸せが溢れて止まらない。


< 164 / 202 >

この作品をシェア

pagetop