無理、俺にして
***

父さんが病院から帰ってきたのは、深夜の……何時だったか。

いつもはここまで遅くならない。

いただきます、と夜ご飯を食べるのも
おやすみ、と声をかけてお互いの部屋に入るのも、いつもだいたい同じ時間。


それなのに今日はいつまで経っても帰ってこないから、先に寝てしまっていた。

……小学生ながら、何か嫌な予感はしていた。


玄関が開く音がしてすぐに目を覚ます。

一体何があったんだと

母さんになにがあったんだと。


そう聞きたいのに、嫌な予感がそれを邪魔して体を動かせなくて。


「……っ」


隣の、父さんの部屋から聞こえてくる嗚咽が聞こえないように
両耳を手で押さえて布団にくるまった。


……次の日


父さんは、目を赤く腫らしながら

母さんの病気が悪化して、予後不良と医師に告げられた話を俺にきちんと説明してくれた。


「……っ」


鼻の奥が、ツンと痛い。
俺の嫌な予感が的中しなくてよかったと思う反面、それでも嫌なニュースには変わりない。


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