無理、俺にして
***

「あ、キミ!!」


母さんの見舞いに来て、帰りにこの人と会うっていうのが俺のルーティンに追加されて数年が経つ。

母さんと同じ歳くらいのその人は、名前も、普段何をしているのかもわからない。
向こうも、俺の名前はもちろん、俺がどうしてここに通っているのか聞いてこない。

ただ、ちょっと暇をつぶす。

そんだけ。


「一週間くらい来なかったけど、なにかあったの?」

「う」


秋音と通った喫茶店で食べたゲロ甘パフェのことを思い出す。

甘いのが苦手な俺は半分も食べられずにギブアップ。

ほとんど秋音が食べて、ポイントカードにスタンプをどんどんためて、ついに今日そのスタンプが満タンになった。


「いや、ちょっと友達とゲロ甘パフェ食べ放題ウィークinうさぎの小屋してた」

「うさぎの小屋!? え、どうだった? すごくかわいいメニューしかないって噂になってるけど!!」

「……あー」


俺が(半分)食べたパフェの名前、なんだっけ。


「……『ふわふわ白うさぎの贈り物』って名前のパフェだった。ちなみに周り女子高生だらけで地獄すぎた」

「えー、彼女と行ったんじゃないの?」

「ガチの男友達」


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