無理、俺にして

否定しきれず、下を向く。

母さんが優しく笑ったのをその吐息で感じる。


「紫乃」


そっと伸びてきた母さんの手が、俺の頭に乗せられて。
それからゆっくり、ゆっくり左右に動いた。


「本気になるって、悪くないでしょ?」

「……っ!?」

「ふふ、紫乃が考えてることなんて、母さんにはなんでもお見通しなんだから」


目を細めて愛しそうに俺を見て微笑む。


ねえ母さん。
青白いその肌は、いつになったら赤みが出るの。


「紫乃は母さんと父さんの子だから、優しすぎるくらい優しく育ってくれちゃって。……でもね、これだけはちゃんと話しておかなきゃと思って」

「……」

「時間と共に忘れられるっていうのは、もちろん悲しいことかもしれないけどね。忘れられずにボロボロになって泣かれてしまった方が、母さんはずっとずっと悲しいの」

「っ」


鼻の奥が痛くて
体が熱くなる。

だめ、だ。


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