無理、俺にして
――たとえばの話。

俺が死んで天国にいったとして

天国からゆめの姿を見ていられるとしたら。


葬式で泣きじゃくる彼女を見て、今日くらいは、なんて一緒に泣くだろう。

墓参りに来て、懐かしそうに俺との思い出を語りながら涙を流すゆめを見て、突風を吹かせてからかってやるだろう。

……俺の事なんて忘れたように新しい男と楽しく過ごしていたら、その時は。


めちゃくちゃ嫌で、嫌で仕方ないけど

幸せになって欲しいと願い、ずっとずっと見守るだろう。



「それで、紫乃の好きな子って、どんな子なの? 脈アリ? アリに決まってるわよね、強力なライバルでもいないと、面白くないんだけどなあ」

「……幼なじみのライバルがいる」

「ええっ、強敵すぎない? 紫乃ってどんなアピールしてるの? あ、何度も言うけどキスはだめよ? 女の子にとって特別なものなんだから、順番は守りなさい」

「分かってるって」


――ガラッ


「おー紫乃、来てたか!」

「きゃー私のアナタっ!! プリンは? 今ね、紫乃の好きな子の話を聞いてたの!」

「ちゃんと買ってきたたよマイハニ……って、え!? マジかよ! 父さんにも詳しく聞かせろ!? 告白は!? いつするんだ!!」

「母さんも気になる!!」

「……体育祭で落とすつもり」

「きゃ~!!」


きっと。

二人みたいな関係になりたいと思った。


そろそろ本腰入れないと、

秋音の何倍もスタートが遅れているから。


……本気で、頑張る。


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