無理、俺にして
そうだ。
それも、折原くんにきちんと話さないといけないと思っていたんだった。


「うちのお母さん、最近まで帰ってくることが少なくてね」

「うん」

「お父さんも物心つく前に亡くなってるから、家はいつも静かでちょっと寂しかったんだ、よね」


寂しいなんて
折原くんに向けて言っていいのかな。


「でも、やっとお家に帰ってきてくれるようになって、昨日は久しぶりに一緒に夜ご飯も食べたの。そういえば、珍しく今日は人と会う約束をしてるみたいで、楽しそうだったなあ……」


そう言うと、折原くんはくふ、と笑ってこっちを見る。


「その流れで、『彼氏できた』って言えた?」

「…………」

「ぶっ……」


無言の否定に噴き出す折原くんを、ムッと睨む。


「で、でもちゃんと話す!! 男の子は怖い人だけじゃなくて、折原くんみたいに優しい素敵な人もいるって、ちゃんと話すもん!!」

「ありがと」

「……う」

「くふ」


なんだか今日の折原くん、機嫌いい……?

私が何を言ってもからかわずに優しく笑ってくれる。

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