無理、俺にして

……なかなか折原くんのことを言い出せないのは

小さい頃から言われていた言葉も、それを話すお母さんの姿も
鮮明に思い出せるから。


すごくつらそうに涙を流すお母さんを見て、
幼いながらも、お母さんのために男の子と仲良くしないようにしようと思った。


「……案外、そんなに心配する必要ないと思うよ」

「え?」

「あ、ここ寄ってく」

「……わあっ!!」


折原くんが指差したのは、綺麗な花がたくさん置いてある花屋さんだった。
花屋さんって来たことなくて、つい小走りでお店に入る。

手は繋いだままだから、折原くんは私に引っ張られるようにお店に入った。


「あら、折原くん。珍しいね、今日は彼女と一緒?」


お店の奥の方で花束を束ねていた店員さんが、こちらに向かって手をふっている。


「そう。初彼女」

「あらあ~!! おめでとう!! 折原くんのことよろしくね、母親思いのいい子だから!」

「……っ、いいから」

「~……っ!!」


店員さんに、ぺこりと頭を下げる。

『彼女』って堂々と言ってくれたのが嬉しくて、もう周りの花どころじゃない。

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