無理、俺にして
「今日はこの花なんてどう?」
店員さんは、折原くんにとある花束を差し出す。
まるで折原くんがくるのが分かっていたみたいに綺麗な水色の紙に青いリボンで束ねられていて、
購入すればすぐに持って行けるように準備されていた。
「ありがと」
「はいよっ!! またおいで!!」
迷わずに受け取り、お金を渡す折原くん。
店員さんは、それを少し申し訳なさそうに受け取るとすぐに元気な笑顔に戻って「またおいで」と声をかけてくれた。
「また来る」
「あ、ありがとうございました!」
折原くんに手を引かれて花屋さんを後にした。
店員さんがお店の外まで出てきて手を振ってくれているので、もう一度ぺこりと頭を下げる。
「……ね、それ、なんていう花なのかな」
折原くんが手にしている花束。
全体的に青をベースに、白や水色の花のなかで一際目立つ青紫の花。
アヤメにも似ているけど、でもちょっと違う……かな?
「カキツバタ」
「え、すごいね折原くん。花の名前もちゃんとわかるんだ」
「んや、最初は知らなかったけど、さすがに通い詰めてたら自然と覚えた」
「そうなんだ……」
きっと、お母さんへのお見舞いに行く途中。
いつもここに寄っていたんだろうなと思うと、胸がきゅうっと苦しくなった。