無理、俺にして
「ごめんなさいね、こんな形でのご挨拶になっちゃうけど、紫乃の母、碧(あおい)です。よろしくね、ゆめちゃん」
「い、いえ、こちらこそ……」
「俺は父の赤斗(あかと)。本当に来てくれてありがとう」
ど、どうしよう。
覚悟はしていたけど、こんな、
何も言葉が出ない。
なんて言っていいか分からない。
せっかく折原くんのご両親が目の前にいるのに。
「……っ」
さっき、初めて折原くんのお母さんを見たとき、
私……泣きそうになった。
あまりにも儚くて、差し込む光と一緒に消えてしまいそうだったから。
「ねえ、ゆめちゃん」
「は、はいっ」
折原くんのお母さん……碧さんは、その冷たい手を私の手の上にそっと重ねた。
ああ、生きてる。
ちゃんとここに、折原くんのお母さんが生きてくれている。
「今日は紫乃のお話、たくさん聞かせて?」
「折原くんの……」
「この子ったらね、私に全然教えてくれないの。なのに嬉しそうな顔しちゃって……いつからこんな焦らしプレイなんか覚えたのかしら」