無理、俺にして
ちらっと折原くんを見やる碧さん。
その表情は、まるで意地悪をしている折原くんと全く一緒だった。


「……俺、散歩行ってきてもい?」

「だーめっ、それに、まだ今日の花束もらってなーいっ!」


碧さんが、わがままっこのように、だだをこねるようにそう言えば
照れたように持っていた花束を渡した。


「くふ、ありがとう紫乃」

「……もう散歩に行っても」

「だーめっ」


あの、いつも飄々としている折原くんが、ここまで圧倒されている。

困ったような表情
照れた表情

でも、碧さんを見つめるその目はどこまでも優しい。


「紫乃、ゆめちゃんのどこに惚れたのか父さんに言ってみんしゃい」

「それは本人に言うからいい」

「はっは、絶不調じゃなー!! 今日は父さんの圧勝なり!!」

「…………くそ、うるさい」


折原くんのお父さん……赤斗さんは、折原くんの反応を見てクックと笑っている。

独特の話し方は、普段の飄々とした折原くんのそれだ。


なんだか、不思議な気持ち。


この二人の元で、大切に育てられたんだ。

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