無理、俺にして
俺としよ

「おっはよ~」

「!!」


教室の隅で、1人肩をふるわせた。

その朝の挨拶は、私に向けられたものではないとわかっているはずなのに。

手に持っていたシャープペンを置き、ノートを慌てて閉じた。


「なんか最近暑くなってきてマジで無理~」

「わかる、でも何故か未だにカーディガン手放せない」

「それな」


先ほど元気に教室に入ってきた子が、周りの女子とそんな会話をしながらゆっくり私の前の机に鞄を置きに来る。
そしてすぐに友達の方へと向かっておしゃべりをはじめた。


それを確認した私は、またそっとノートを開く。

……このノートは誰にも見せられない。

私の、私だけの秘密のノート。


ありがたいことに私の席は窓側の隅っこ。

友達もいない私は、誰にも邪魔されずにこの秘密のノートにシャープペンを走らせることだけが毎日の楽しみだった。


「またやってるよあいつら」

「あ、マジだー」


ふと、周りのおしゃべりが耳に入って、みんなが見ている外へと視線をうつした。

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