無理、俺にして
中庭にある池の前で、手押し相撲(……というより落とし合いにもみえる)をしている男の子2人組。
それを面白がるように囲んで盛り上がる数人の男子。
「ほんと目立つよね、あのグループ」
「え、そう。特にあのバカ2人は特に目がいくよねー」
バカ2人、というのはおそらく。
池に背を向けて笑顔で抵抗する折原 紫乃(おりはら しの)と、楽しそうに足なり手なりを使って折原紫乃を池に落とそうとしている円城 秋音(えんじょう あきと)。
2人とも180㎝いかないくらいの身長で、顔は整っている。
今中庭で騒いでいるグループは基本的に目立つが、中でも2人の人気は圧倒的。
ひっそり過ごしている私でも2人の顔と名前を知っているくらいだ。
「折原かっこい~」
「わかる!! でも私は秋音くん派」
「……あ~落っこちた!!」
円城秋音に見事に押され、折原紫乃はそのまま池へ背中からダイブ。
尻餅をついた状態で少しムッとしたあと、円城秋音の腕をつかんでグッと引っ張って見せた。
「あああ、秋音くんまで落ちちゃった」
「2人ともほんと楽しそう~!!」
「やってることバカだけどなんか見ちゃうよね~」
池に落ちてびしょ濡れのまま、2人は大きく口を開けて笑っていた。