無理、俺にして
*紫乃side*

「のー、と……」

「ん?」

「返……して……」

「くふ、またそれかい」


俺に包まれて体温が上がったんかな。

折原くんのバカと、大きな声を出した後。

急に大人しくなったと思って黙って見ていたら、どうにも眠たくなっていたらしい。


怒ったり、照れたり、泣きそうになったり。

ほんと表情ころころ変えて面白いなあこの子は。


何かかけてやりたいと思っても、あいにく手元には何もなくて。

仕方なく自分の方にもう少し引き寄せてぎゅっと抱きしめる。


「……ふふ」


俺の胸に顔をうずめて、微笑んだ。


……こいつ。

いくら男を知らんからって、無防備すぎでは……?

アンタのお母さんが言っていた言葉はあながち間違いじゃないんだけどなあ。

隣にいるのが俺でよかったネ、なんて思いながら目を閉じる。


俺も、一眠りしよ。

……。

…………。


…………眠れん。

別に、緊張してるわけでも、意識してるわけでもないはずなのに。

おかしいなあ。


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