無理、俺にして
そのまま意外とすんなり隣の教室まで来られてしまった。さすが俺。
しかしここで気付いた。
教室の窓に鍵がかかっているということに。さすが俺。
教室の中を見た感じ、秋音はまだ戻ってきてはいないようだった。
「はて、どうしたもんか」
仕方ない。外から侵入できることもこれでわかったし、一度引き返してタイミングを見るか。
そう思って戻ろうとした時だった。
「お」
なんとすぐ目の前の席に女の子が座っていた。
灯台もと暗しすぎだろ。
なにやら熱心にノートに書き込んでいる。
こんな時間に教室に残って一人お勉強とは、感心感心。
そうやって目の前で真面目に何かをしている所をみると、どうにもちょっかいをかけたくなってしまう。
俺は壁にあるちょうどいい凹みに片手でつかまりながら、窓ガラスをコンコンと叩く。
「……うっそぉ」
音がした方とは逆の、教室の入り口の方をきょろきょろと見渡した。
アホなんかなこの子。
今度は少し力を込めて、それでも気付かなそうなので4回叩いた。