無理、俺にして
ばいなら
「あ、オリ見っけ」
「秋音くん、鬼?」
「んん、逃げ勝ち」
「くふ、それは勝ち」
「……」
「……」
いつも話すときの声のトーンよりも少しだけ低い。
原因は間違いなく、俺の足の上に頭を乗せてすやすやと寝息をたてている『ゆめちゃん』にあるんだろう。
というかこの子の名前そういえば知らんかったな。
「あの、さ!!」
「ふむ?」
俺の隣に腰を落としたかと思ったら、今度は少し大きくなった声を出す秋音。
「な、なんでオリとゆ、音原さんがここに……っ!?」
明らかに動揺している秋音が珍しすぎて、ついいつもの癖で笑ってしまいそうになる。
昨日の秋音の言っていた用事とやらも、二人のわかりやすすぎる反応を見てすぐに理解した。
だがこの子との関係を何故俺に隠すのかがわからん。
秋音ならすぐに言いそうなのになあ。
まさかあの秋音に親しい女の子がいたとは思わなかったから、素直に驚いた。