無理、俺にして
「おはよーちゃん」
「おっ折原くん!!?」
せっかく笑顔でひらひらと手を振ってあげたのに、とんでもないといった表情で人の名前を叫んだ。
……と思ったら顔が瞬時に真っ赤に染まる。面白すぎるでしょ。
「ず、ずっとここに……?」
「誰かさんが離してくれんかったからなあ?」
「ぎゃああっ!!」
「そんなに叫ばれると俺ちゃんショックなんだが……」
彼女……音原ゆめは俺の言葉を聞いてハッとしたような表情をする。
いや、本当にころころ変わりすぎて飽きない。
「これ……」
やっと自分の肩にかけられているワイシャツの存在に気付いたようだ。
というかおれも忘れてた。どうりで肌寒いと思った。
「そうそう、俺のヨ。早く返しんしゃい」
「そうだよゆめちゃん、オリはこう見えて寒がりなんだからさ」
ここでやっと会話に入ってきた秋音。
好きな女が他の男のシャツを身につけているのが相当気に食わんらしい。
……心配せずともいいのに、と、またおかしくなって笑いそうになる。
でもここで笑うとそろそろ秋音を本気で怒らせてしまいそうだから、我慢。