無理、俺にして
「……お」
と思ったけど、そうもうまくいかんらしい。
視線を落とした時、彼女が忘れていった弁当がそこに置いてあった。
今急いで追いかければ間に合う……が、しかし。
「どうしたもんかなあ……」
少し考えて、出た結論。
「まあいっか」
そういうあいつも、結局俺のワイシャツ持って行ったままだ。
ムンクよ、お互いに貸し借りが多くて大変だにゃ。
「いっただっきまーす」
明日、教室まで弁当箱を返しに行ったら秋音は怒るだろうなあ。
「んまぁ」
はてさて、今頃あの二人はどんな会話をしとるんかな。
まあ想像はつくけども。
「ぬーん、これからどうしたもんか」
確かに秋音なら、あいつの欲望を満たしてやるに最もふさわしいポジションだと思うんだけど。
飽きてきた日常の中で、せっかくおもしろそうなことが始まったのに、そう易々と秋音に譲るのもちょっとなんか、ちょっとじゃん。
「……いかんな、本気になる前に引かんと」
それにしてもこのハンバーグ……
「んまあ~……!!」
ま、なるようになるか。
「とりあえず、後処理は任せたぞムンクよ」
ああ、なんだか今日は気分がいい。
いつもより数倍楽しく過ごせたせいかもしれない。
「……久しぶりに花でも買って行ってやろうかにゃー」
そうと決めた俺は、いつもより軽く感じる足取りで学校を後にする。