龍臣先輩は今日も意地悪


「咲結」


「なんです」



なんですか、という前に驚いて声が止まった。




龍臣先輩は私が緩く頭に結んでいたハチマキをするりとほどく。


そして満足げにポケットから出したもう一つの同じハチマキを私の首にかけた。




「はい、交換」


「…え、」




何が起きたんだ


一瞬の出来事に私はただ呆然とする。




龍臣先輩の手には “ 有明咲結 ” と書かれたハチマキ。


そして私の首から下がるハチマキには “ 夏木龍臣 ” と書かれているのだ。




「体育祭終わるまで貸して、俺のために」



「…同じ色だから、何も変わんないですよ」



「ばーか。じゃあね」




龍臣先輩は私の頭をぽんとなでて自席に帰っていった。



私はもちろん、麻里奈に霧崎先輩、まわりにいたファンの皆様も呆然。




ただ残されたこのハチマキと、連れ去られた私のハチマキ

これを見れば大体の人は一目瞭然。




龍臣先輩と、ハチマキを交換してしまった。


……というか、交換されてしまった。



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