龍臣先輩は今日も意地悪
【咲結side】
「あ、ハチマキ子」
「…え?」
打ち上げが始まり落ち着いたころ、お手洗いを出たところで声をかけられた。
いや、声かけられたの私…なのか?
「聞いてんの?ハチマキ子ちゃん」
「それ、私のことですか…」
ハチマキ子、そう呼び私を指さす茶髪の女の人。
あ、この人…
「ハチマキ泥棒猫のほうがよかった?名前知らないからテキトーにあだ名付けて呼んでたの」
くるくるの巻き髪をひるがえし、だるそうにため息をつくその人。
私はしっかりと見覚えがあった。
だって…
「体育祭で龍……夏木先輩に抱きついてた人ですよね」
「何その覚え方、ウケル」
今であったばかりだけど、もうすでにわかることが一つ。
見たことないジャンルの、変わった人だってこと。
「あたしの名前知らないわけないよね?」
「……すいません、聞いたことはあるんですけど」
なんて言ってたっけ、思い出せない。
素直に白状するとその人はまたウケル、と言って笑っていた。