龍臣先輩は今日も意地悪
「咲結、おいで」
「犬じゃないです」
「よしよし、怖かったね~」
私の言ったことをいじるように頭をなでてきた先輩の手はぱしっと払いのけた。
「やめてよいじめてないよ。ライバルってヤツがどんなもんなのかは誰だって気になるでしょ」
「うーん、確かにね。でもこの子はダメ。」
「何それ、そんなのはじめてじゃない?なんか別人みたい」
「あたりまえじゃん。今回ばかりはガチだから、俺」
おいでと引っ張られて龍臣先輩の胸にダイブした私は二人が何を話してるのかいまいち聞き取れなかった。
片耳は先輩の胸板、もう反対側は先輩の骨ばった手に覆われているから。
「恋奈の時とはまるで別人じゃん」
「ん-、そうかもね。だからこの子にはちょっかいかけないで、慣れてないからいろいろと」
「ナツキのタイプと違くない?遊んでる軽い女のほうが好きなんじゃないの」
「はは、なにそれどこ情報だよ」
龍臣先輩の手は離れていき、そっと解放された。