龍臣先輩は今日も意地悪
――
「…やっと出てきた、ハチマキ子」
「……エリカ先輩」
「ほんとに名前覚えてくれたんだ、ウケル」
団長である龍臣先輩がお会計をしている間に店の外に出るとそこにはエリカ先輩。
実にデジャブである。
「ねえ、サヤちゃんだっけか」
「…サユです」
「そうそう、サユちゃん。あんたあたしのライバルだと思っていいんだよね?」
凛としたその声が耳に響く。
他の赤団の人たちはもう店の敷地外にいるからここにいるのは私たちだけ。
そしてこの人が言った言葉の意味は、今の私ならもうすぐに理解ができた。
「…無言は肯定ってことね。ってかあたしにビビってる?ウケル」
エリカ先輩はたぶん、ウケルが口癖なんだろうな。
まあそんなことどうでもいいんだろうけど…
「あたし負ける気ないよ。その程度のひよっこちゃんに」
「ひよこ…」
はじめて言われた。
私がヒヨコならエリカ先輩は鶴か何かかな。いや、ブラックスワンか…
でもエリカ先輩はなんていうか、いやがらせとか警告とかじゃなく、堂々とライバル宣言をしてくる。
いやがらせして無理やり諦めさせたりとかするような人には見えない。
「…宣戦布告、ですか」
「あー、うん。あたしバカだから難しい言葉わかんないけどたぶんそー。」
エリカ先輩、思っていた人と違ったかもしれない。
体育祭で初めて見かけたときは綺麗で目力が強くて、失礼ながら気が強そうで怖そうな人だなって思った。
でも…たぶんだけど、この人は悪い人じゃない。そう思う。
「ナツキの視線があんたのほう向いててもいまのとこ諦めないから、ヨロシク」