龍臣先輩は今日も意地悪
「テーサツしにきた」
「偵察な、て・い・さ・つ」
「あ、ばかにしてるでしょ。夏木もあんま変わんないのに」
「うっせえ」
ここにきてからエリカ先輩はひたすら私と話していた。というか一方的に話しかけ続けていた。
仮にも図書室なのに本なんかには目もくれずまっすぐ私がいるカウンターに来たエリカ先輩。
龍臣先輩に用があるのかと思いきや、一度も龍臣先輩の話題は出てこなかったような…
テーブルで仕事をする私をじっと見つめ、他愛もない話題を振ってきていた。
「何?田宮も咲結のこと気に入ったの?やだよ譲んないからね」
「仮にも自分のこと好きな女の子によくそんなこと言えるよねぇ」
「はは、それだけ気許してるってことだろ」
仲いいな、この二人。
でも…
「うるさいですよ、ここ一応図書室なんですけど」
「やだあサヤちゃん、やきもち?可愛い~初々しい~」
「そんなんじゃないです。あとサユです」
エリカ先輩はどこか龍臣先輩に似てるな、やっぱり。
「なんで呼び出されてたんですか?お説教ですか?」
「咲結ってやっぱ俺のことめちゃくちゃナメてるよね…」
「……いいえ、まったく」
「その間だよ、間」
ナメてはいない。これは事実だ。
…ただちょっとだけ、からかいやすかったりするだけ。
龍臣先輩の言葉を借りるならば、気を許しているだけだ。