龍臣先輩は今日も意地悪
「……全っ然理解できないです」
「あれ?咲結ちゃんバカ?もしかしてこっち側の人間?」
さすがに学力では負けないだろうけど、この人たちのぶっ飛んだ思考は本当に理解できない。
え?じゃあエリカ先輩は龍臣先輩が好きなんじゃないの?
あんなに私に釘を刺してきたのもただ面白いからってこと?
「どう?妬いた?俺の作戦成功?」
「…っ知らないです」
「お?ちょっとは効果あったぽいじゃん。ナイス田宮ー」
「ジュース一本おごってね」
龍臣先輩たちはハイタッチをした。
そしてエリカ先輩はまたしても嵐のように去っていくのだった。
「……え?怒った?」
「怒ってないです」
エリカ先輩がいなくなった図書室、日は暮れて私たち二人のみ。
静かな空間が気まずさを助長した。
「ごめんごめん、まさか咲結が妬いたりするわけないよね~」
龍臣先輩はへらへらしながらしながら本を棚に戻す。
…妬いたりするわけない、だってさ。
体育祭の時の龍臣先輩の腕にエリカ先輩が抱きついていた光景を思い出す。
あの時の私は、どう思っていたか。
……やだった。もやもやして、イライラした。
いつもは私の横でへらへら笑ってる龍臣先輩がとられたみたいで。
…まあ私の龍臣先輩じゃないけどさ。
なんで違う女の人に抱きつかれてるのって、思ったよ。
こんなんもう、1つしかないじゃん。
「……てましたよ」
「……え?」
ぽつりとつぶやいた一言で図書室はシンと静まる。