龍臣先輩は今日も意地悪
あぁ、やってしまった。
声に出てしまった。
なんで私はこう高まると全部口から出てしまうんでしょうか。
「……え、と…トイレ、行ってきます」
ガタン!と大きな音を立てて椅子から立ち上がる。
その拍子に椅子が後ろにひっくり返って倒れてしまったけど、それどころではないのだ。
ごめん、椅子。あとで謝る。元に戻す。
「ねえ」
「あとにしてください」
「咲結」
「……っ」
図書室のドアに手をかけたとき、そのドアをおさえるように後ろから龍臣先輩の腕が伸びていた。
開かない。出れない。逃げられない。
「…また言い逃げ?2回目は逃がさないよ」
2回目、というのはきっと打ち上げの帰りの時の話だろう。
何も言われなかったから聞こえてなかったのかと安心していたのに最悪だ。
「…な、なんのことですか」
「ごめん、俺聴力めちゃめちゃいいんだよね」
「…」
この状況からわかることは一つだけ。
…もうどこにも逃げ場がないということだ。
「妬いたの?俺と田宮が一緒にいるの見て。田宮が俺のこと好きなのやだって思ってくれたの?」
「…っ」
核心を突かれた私はただただ恥ずかしくて、龍臣先輩に背を向けたままうつむいた。
顔の表面温度がどんどん上がっているのを感じてとてもじゃないけど見せられない。