龍臣先輩は今日も意地悪
いつの間にか外も真っ暗。
校内で電気がついているのもあとは教員室と部室棟くらいで。
「……」
ぼーっと外を眺めていた私の視界に入った人影。
部室棟の前を歩く運動部員が二人。
……遥輝と、水森センパイ。
「今度はどこの男見てんのさ。ったく咲結チャンってば惚れっぽいのは俺にだけでいいって」
「っ、そんなんじゃないです」
この景色を龍臣先輩が見るのは良くないと思った。
なんか、反射的に。
「なに、何が見えたの」
本棚の前にしゃがんでいる先輩が窓の外を見ないように先輩の正面に立った。
正直自分が何をしたいのか分からない。
でも、あれを見て嫌な気持ちになるのは私だけでいいと思う。
「…当ててあげよっか」
「いいです」
「彼氏クンと恋奈、でしょ?」
グイッと腕を引かれ、私を見上げる先輩と目が合った。
そらせない。綺麗な漆黒の瞳に吸い込まれる。