龍臣先輩は今日も意地悪


「わかりやすいなぁ、咲結チャン」


「……なんでもないって言ったじゃないですか」




「はは、顔に出てんだよ全部。俺が恋奈の浮気を目撃したら傷つくとか気遣ってくれたんでしょ?」





私から手を離して本棚の整理に戻る龍臣先輩。



その様子は、まるでいつもと変わらない姿に見えた。




「…っ、悲しくないんですか?浮気されて。他の男の子と一緒にいるの見て」



「悲しくはないよ。言ったでしょ?好きになりきれてないって」




もう、分からない。



先輩が自分と同じように浮気されてるのを見て悲しんでて欲しかったの?



違うじゃん。




先輩に私みたいな思いしてほしくなくて隠したのに。



やってること、全部めちゃくちゃ。





「咲結チャンは優しすぎるんだよ。優しすぎて脆い。ちょっとの衝撃で壊れちゃいそう」



「っ、そんなことないです」


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