龍臣先輩は今日も意地悪
【咲結side】


「おはよう、咲結!」

「おはよう有明〜」


「おはよう」





駐輪場に自転車を止めて教室に向かう私に何人か友達が挨拶をしてくれる。



嬉しいことに、これが日常。





有明 咲結(ありあけ さゆ)。高校2年生の17歳。




“さきゆう”でも“さゆう”でもなく、さゆ。




12月24日、クリスマスイブ生まれのO型。



好きな食べ物は甘いもの。



趣味は音楽を聴くこと。

最近は邦ロックばかり聴いている。



名前はちょっと珍しいかもしれないけど、どこにでもいる普通の女の子だ。



友達は少なくない。


高校1年生の時に告白されて付き合った彼氏もいて。





自分で言うのは変かもしれないけど、順風満帆。

そんな高校生活を送っていた。








「──順風満帆、だったんだけどなぁ」





図書室から見える部室棟の2階。

ポツリと一部屋だけ電気が付いているのは男子バスケットボール部の部室。




その部屋の開いた窓から見える男女の姿を見ながら、ぽつりと呟いた。


一人しかいない図書室に虚しく響いて消える私の声。





「私、なにかしたっけなぁ」





半分ほど開いた窓。




幸せそうに笑う男女はそのまま吸い込まれるようにキスを交わした。


それからぎゅっと抱き合って。




普通だったらここで、うわぁ幸せそうだなぁ。羨ましいなぁ。なんて思うんだろう。


でも……




あのカップルの男子、私の彼氏なんだ。



だから私は、羨むことも微笑ましく思うこともできなかった。





あれは俗に言う、浮気ってやつなんだろう。




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