龍臣先輩は今日も意地悪
「はい、終わった。私職員室に出しに行ってくるね」
椅子から立って週番日誌を持って部屋を出た。
ちょっと、これ以上遥輝と一緒にいちゃダメな気がした。
遥輝のこと嫌いになりたいわけじゃないのに、どうしても恋奈先輩がちらつくんだ。
その顔を見ると胸が痛くなるんだ。
こんなタイミングで遥輝と2人で週番になるなんてほんとうについてない。
誰だよ、席順で前後の人と週番やるって決めたの。
誰だよ、私と遥輝の席前後にした人。
「先生、日誌出来ましたー」
「おう有明!お疲れさん!!」
先生のデスクに週番を持っていくと、デスク上のグラビア雑誌と目が合う。
……この、えろオヤジめ。職場に何持ってきてんのよ。
「っ、あ!有明!違うんだぞこれは!特集ページに俺の好きなバンドが載っててだなぁ!」
私が雑誌に冷ややかな目を向けてるのに気づいて慌て出す先生は詰めが甘い。
だからいつも学年主任に怒られてるんじゃん、なんて。
「先生…その雑誌のこと黙っててあげるから席替えしてよ。」
「んあ?そうだなぁ、久しくやってないし次のLHRでやるか。別に脅されて仕方なくとかじゃないからな」
「え、ほんと!?」
「その代わり黙ってろよ?俺がグラビア見てたってこと」
……やっぱり見てたんかい。
「分かりましたよ、約束破ったら学年主任にチクりますから。さようなら」
「おう、俺は約束は破らない男だ。気ぃつけて帰れよー」
これで遥輝と席が離れられる。
…なんで喜んでんだか。
前回の席替えで遥輝と前後になった時、2人でハイタッチして喜んだくらいだったのに。
なんて、そんなのもう何ヶ月も前の話だけど。