龍臣先輩は今日も意地悪
「浮気したのって聞いた?」
「…まさか」
聞けるわけないじゃん。
私は怖いんだ、遥輝からきっぱり別れを告げられるのが。
先輩ほど割り切れてないし、先輩ほど強くない。
「…よし、帰ろっか。先輩が美味しいアイスの店連れてってあげる」
「だから…先輩と一緒にいたら私が」
「図書委員の買い出しだってば。ね?」
……それならいっか、なんて思ってしまう自分が嫌だ。
でも、一緒に帰るくらいなら許されるよね。
遥輝みたいに、浮気じゃない。
「今ならもれなく俺の奢り。どう?」
「……トリプルアイスでトッピングありなら」
「おぉ、容赦ないねぇ。いいよ、昨日給料日だったから」
龍臣先輩は私の冗談をそのまま聞きいれた。
…なんでただの委員会の後輩にこんなに優しくしてくれるんだろう。
同情か、仲間意識か、何なのか。
まあ、いいや。なんでも。