龍臣先輩は今日も意地悪
「ごほっ、え、なに急に…」
最後のアイスを食べていたころ、向かいに座る麻里奈が突然そんなこと言うからむせてしまった。
なんてこと言うんだ、この子は。
「だってやっぱり私浮気する男無理だし。遥輝といる時の咲結別に幸せそうじゃないもん」
「……」
麻里奈の言うことは間違ってないけど。
幸せそうじゃない、か。
まあ幸せかと言われるとそうでもない。
最初こそ楽しかったけど、ここ数ヶ月は…うん。
「この話は別の時にしようよ。先輩達関係ないし」
「関係なくないじゃん、だって遥輝の浮気相手の彼氏が隣にいるんだから」
「ちょっと麻里奈!」
まさか龍臣先輩のことまで言うと思ってなくてとっさにさえぎる。
仮にも先輩になんてこと言うんだ。
怖いもの知らずというか、空気が読めてないというか。
「私理解できないんだよ、なんで浮気されてんのに2人とも別れないの?」
「…なんでだろうねぇ、俺もわかんないかな」
なんて笑う龍臣先輩。
なんでって、それが分かったら困ってないよ。
自分がどうしたらいいか分かんないのは私なんだから。
「…少なくとも咲結は別れた方がいいよ。咲結のために」
そう訴えかける麻里奈の目は真剣だった。