龍臣先輩は今日も意地悪
「どうしたの咲結」
「…なんでもないです。ありがとうございます」
ドアだって当たり前に開けて待っていてくれる。
遥輝にはない、先輩のいいところ。
なんて、なんでもかんでも遥輝と比べなくていいのに。
遥輝は遥輝、先輩は先輩なのに。
なんでか、遥輝との思い出を先輩はどんどん塗り替えていく。
「ありがとうございます、いろいろ」
帰り道にコンビニで買ったパピコを半分くれて、断ったのに家の前まで送ってくれた。
最初からうっすらわかっていたけど、今日改めて実感したこと。
龍臣先輩は確かに変人だけど、たいがい悪い人でもない。
ううん、むしろとてもいい人だ。