龍臣先輩は今日も意地悪
「惚れた?俺の紳士ぶりに」
「惚れてはないです、感謝はしてます」
「いいねぇその動じなさ。咲結のそのポーカーフェイス、はやく崩したい」
「…どういう意味ですか」
「なんでもない。とりあえずせめて早く嫌いじゃなくなってもらうように頑張るね」
龍臣先輩は玄関ドアに触れたわたしにそう言った。
嫌いじゃなくなってもらうように
彼は私に、嫌われていると思ってる。
「……嫌いではないです」
ぽつりと呟いた、これも本心。
たしかに初めてであったタイプの人だからリアクションに困るところも多々ある。
でも、嫌いじゃない。
優しいし、私が暗い気持ちになったときはいつもくだらないことで忘れさせてくれる。
嫌いじゃ、ない。
「…先輩?」
驚いたように目が点になる龍臣先輩。
どうしたんだか、私を見つめて固まっている。
「っ、ごめん、びっくりして固まってた」
「はぁ」
「ふは、咲結ってほんと素直っていうか、ドストレートだよね」
「なんのことですか」
「ううん、こっちのハナシ。じゃあまたね。麻里奈ちゃんと仲直りするんだぞ」
「…はい、ありがとうございました」
改めてお礼を言うと龍臣先輩は後ろ手で手を振って去っていった。