龍臣先輩は今日も意地悪
「……もう図書室の閉館時間過ぎてますけど、どちら様ですか」



「へぇ、きみ俺の事知らないの?」



「……芸能人か何かですか?」



「ははっ、うける。おもしろいねきみ」



「……」



「ごめんごめん、俺図書委員の原田センセーに呼び出されたから来ただけだよ。そんな不審者見る目やめなさい」


「原田先生ならいませんよ」


「えー、放課後図書室に来いって言ってたんだけどなぁ」





おかしいなぁ、なんて首を傾げる先輩。


この人、バカなのかな。





「先輩、放課後って授業が終わってすぐの事じゃないですか?もう6時ですよ」


「いやぁ、すぐ行こうと思ってたんだけど最後の授業保健室でサボってたらそのまま寝過ごしちゃってさぁ」





あぁ、だからこんなにだらしない格好なのか。なんて納得してしまう。





「きみは?何してんの?やっぱり覗き?」



「……図書委員の当番です。片付け終わってあと帰るだけですけど」



「あー、もしかして俺とシフトずっと被ってる2年生の子?」



「は?」




「俺一応図書委員の夏木龍臣(なつき たつおみ)。名前くらい聞いたことない?結構有名人なんだけど」





夏木……龍臣。


記憶をたどって、はっと気づいた。


この人……




「まさか、今年度入って1回も当番の日に来たことない人ですか」



「そうそう、それ俺」





へらっと笑う夏木先輩。


その笑顔にちょっとイラッとした。



この男、今まで1度も図書室に来たことがない図書委員だ。


シフト制のこの委員会で、私と一緒に水曜日の放課後の当番になっている。

でも1度も来たことはなくて、いつも私が1人で担当してたんだ。



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