龍臣先輩は今日も意地悪
「よぉ、おはよう」
図書室に行くとカウンターの椅子にふんぞり返る龍臣先輩。
家か。なんてツッコミはもうn回目。
「これあげる」
「わっ、なんですか…」
「冷やしなよ、パンダみたいだから」
龍臣先輩がほおり投げてきたのはペットボトルの冷たい水。
…やっぱりバレてたのか、先輩にも。
「…噂、もう3年生にも伝わってるんですね」
別に有名なカップルだったわけでもないのに、現代っ子ってすごいな。
「そりゃ、咲結が有名だから…」
「え?遥輝じゃなくて私ですか?」
有名だなんて、なんの間違いだか。
帰宅部だし、人前で何かしたことがあるわけでもない。
きっと人違いだろう。
「ま、咲結は知らなくていいよ。でもほかの男が寄ってきてもほいほいついてっちゃだめだよ」
「?」
「たとえ美味しいもの奢ってあげるとか言われてもついていかないこと」
「自己紹介ですか?」
まったく何が言いたいのかわからなかったから、とりあえず私は返却本を棚に戻しに行った。