龍臣先輩は今日も意地悪


やっぱ、なにも聞かないんだ。



噂って言っても、『別れたらしい』とか『咲結ちゃんがフラれたらしい』程度。



フラれたわけじゃないけど、私があれだけ目を腫らしていたならそう思うだろう。



原因は一切知れ渡っていない。


浮気云々も知ってるのに、聞いてこないのはたぶん龍臣先輩なりのやさしさ。



「こんなこと言っていいのか分からないですけど、龍臣先輩はなんで別れないんですか?」



「…なんでだと思う?」

「…さあ」



龍臣先輩くらい肝の座ってる人なら別れるなんて容易いだろう。


私みたいに勇気が出ないなんてことはないし、なおさら不思議。



「ま、これで咲結フリーになったことだし?これからはもうちょい堂々とイチャイチャできるね」



「え、しませんよ。先輩のファン怖そうだし。第一先輩はまだ別れてないんだから…」



ぎゅ


「別れたらイチャイチャしてくれんの?」



不意に後ろから握られた左手。

その言葉の意図は、不明。



「ふざけてないで、はやく終わらせましょう」



「…そーだね」



< 64 / 155 >

この作品をシェア

pagetop