龍臣先輩は今日も意地悪
事件が起きたのは次の日の放課後だった。
「おい!3年の夏木先輩と水森先輩がもめてるって!」
教室に駆け込んできてそう言ったのは隣のクラスのバスケ部の男の子。
「うぇ!?ガチ!?行こうぜ!」
「おいおい、やべえな!」
「咲結っ」
「…行く」
教室にまだ残っていた人たちは大半走っていった。
不安げな麻里奈とともに、私も後を追う。
1つ上のフロア、3年生の教室がある階の廊下だった。
「なんで…っ!私は臣くんのことだけっ」
「へぇ、よく言うよ。部室で後輩とキスしてたくせに」
泣きじゃくり龍臣先輩に抱きつく恋奈先輩と、それを突き放す冷たい目をした龍臣先輩。
うちのクラスだけじゃなく先輩もいるギャラリーの前で、いわゆる修羅場になっていた。
「何回も言ったよね、俺は恋奈を好きになれてないって。別れようって。
それを拒んだのは恋奈だろ?それで浮気するくらいなら別れようって。
俺なんか間違ったこと言ってる?」
「だって臣くん全然振り向いてくれないんだもん!
私は臣くんが好きなのに…ずっとずっと、臣くんだけなのに…」
「じゃーね恋奈。今までアリガト」
龍臣先輩は恋奈先輩の腕をほどいて廊下を歩いていった。
その場はシンとしていて、これだけのギャラリーがいるのに恋奈先輩の泣き声以外何も聞こえない。