龍臣先輩は今日も意地悪


「ほんとに俺の事知らないんだ」


「知らないです」


「そりゃあ残念。我ながらこの学校では知名度高い方だと思ってた」



「……知らないです」





申し訳ないけど、私は他の学年にまったく興味が無いから図書委員以外に1人も知り合いはいない。


帰宅部だし。別に先輩とかかわりないし。




「あ、あとあれだきみマリナちゃんの友達でしょ」


「……はぁ。」





マリナ、というのは私がいつも一緒にいる親友の名前だ。



なんで、この人がそれを。



まあ、どうでもいいか。





「で、何でひとのキスシーンなんか見てたの?あれ誰?」



私の近くからひょこっと窓の外を見る先輩。


距離感近いな、このひと。




肩と肩が触れ合いそうになり私はすっと身を引いて間を開けた。




「……先輩?」




先輩は窓の外を見て少し驚いたように目を見開いた。




「ん?」




かと思えば私の声でハッとしたように元の胡散臭い笑顔に戻って。



知り合い、なんだろうか。





「あの彼、きみの知り合いだったの?」





聞こうと思っていた質問は先に取られてしまった。




……まぁ、言ってもいいか。





「……あの男子の方、私の彼氏です。たぶん、一応。」






別れようなんて言われてない。


付き合っている。はず。





「…へぇ」





またしても一瞬ピクっと目を細めた先輩。





「…浮気、ですかねあれ」


「きみが別れてないならそうなるね」


「……わかれて、ないです」





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