龍臣先輩は今日も意地悪
「有明は“リ明”に改名したら結構後ろになれるな」
「やだよ、ダサい」
「おいディスんな?」
そんなン堂くんに付き合うのも面倒で私は話を聞き流しながら記録を取った。
「ねえ有明、聴いてる?」
「限りなく聞いてないかな」
笑顔で返してあげると安堂くんはチッと小さく舌打ちをした。
聞こえてたけど、あえて言わないでやろう。
「……有明、遥輝と別れたの」
「…うん、仲いいんだっけ」
例外なく他クラスとも仲のいい安堂くんはたしか、遥輝とも仲が良かった。
なんでかは知らないけど、安堂くんのことだから特に深い理由はない。
「有明最近モテてんね。俺よりモテやがって」
「一言も二言も余計だね」
「全員振ってんだろ?サッカー部のタナカもフラれたって泣きついてきた」
「タナカくん…一昨日の子だよね」
一昨日告白してくれた子はたしかタナカと名乗っていた。
サッカー部だったんだな、知らなかった。
「よく覚えてんな、喋ったことないって言ってたのに」
「そりゃあフったけど、あくまで告白してくれた相手だから」
人を覚えるのが得意なわけではないけど、さすがに忘れるなんて失礼なことできない。
付き合えないなら付き合えないなりに、私なりの誠意というものがあると思う。
「いい奴だなリ明。俺感動したわ」
「アリアケね。その変な呼び方やめて安堂くん」
「俺はン堂でもいいのに」
「関係ないよ。私はアリアケなので」