龍臣先輩は今日も意地悪
部室にいる彼は私の彼氏だ。見間違うわけが無い。



私の、人生初めての彼氏で

人生で初めて自分のことを好きだと言ってくれた男の子。



図書室と部室棟はそんなに離れてないから顔まではっきり見える。




あの黒髪の短髪、少しだけやけた健康的な肌、身につけているゼッケンの番号である9。

残念ながら、私の彼氏の武内 遥輝(たけうち はるき)に間違いない。





「奇遇だね、ほんと」



「はい?」





なんのことなのかさっぱりわからなかったけど、先輩を見たら少しだけ儚げな目をしていた。





「…もしかして、あの女の人、知り合いですか?」




「彼女だよたぶん、一応。俺の彼女の水森 恋奈(みずもり れな)。」



先輩はへらっと笑って、先ほどの私の言い方を真似てつぶやいた。



そんな偶然があるんだろうか。




遥輝の横にいる小柄な女の人。


見たことないから先輩か後輩だとは思ってたけど。





先輩も……浮気されてる。


しかも、私の彼氏と。





「もしかして俺らここであったのも浮気のシーン目撃しちゃったのも運命なのかな」




なんてへらりと笑う先輩。





さっきの少し驚いた顔はそういう意味だったんだ。



先輩も、浮気されてることを知らなかったんだ。



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