龍臣先輩は今日も意地悪
「なあ、もう帰るの?俺もう練習終わるし一緒に帰ろうぜ」
「え、何急にどうしたの?ていうか私…」
突然のお誘いに乗れないのには理由がある。
なんと説明するか迷っていた時だった。
「咲結」
例えるなら、とんでもないスピードでダンプカーにでも突っ込まれた気分だった。
ああ、最悪だ。
「…夏木龍臣?」
「先輩呼び捨て?感心しないなぁ、サッカー部エースの安堂翔琉クン」
校舎の入り口ドアにもたれかかり黒い笑顔でこっちを見るのはまぎれもなく龍臣先輩だ。
龍臣先輩と私に関わりがあることは麻里奈たちくらいしか知らない。
しかも委員会前の会話から、なぜか龍臣先輩は安堂くんを嫌っていることもわかってる。
……逃げていいかな。
「どういうこと?有明、なんで夏木龍臣…センパイと?」
安堂くんは訳が分からないといった不審な目で龍臣先輩を見た。
なんでだろう、安堂くんも龍臣先輩を好いていないような気がする。
「図書委員で!一緒なの。それだけだよ、同じ曜日担当だから」
「…へえ。で、そのセンパイが有明になんの用?」
「なんの用?俺も同じ事聞きたいなぁ。咲結と一緒に帰るからもういい?」
「はあ?俺だって有明と一緒に帰るんだけど」