幼なじみの一途な狂愛
「どこ行ってるの?」

梨々香の手を握り、引っ張っている乙哉。
しっかりと繋がれた手を、梨々香は振り払えずにいた。

「んー?内緒!」


ジュエリーショップに着く。
「え?ここ……」

「いらっしゃいませ」
「えーと……あった!
これ、ちょうだい!」

乙哉はガラスケースの中のピアスを指差した。

「え?乙哉、これ、レディースのピアスだよ?」
「うん。わかってるよ?
梨々にプレゼント!!」

「え?え?ダメだよ!!
これ、値段が高いんだよ?」
慌てて止める、梨々香。

「でも、欲しかったんだろ?」
乙哉は頭をポンポンと撫で、微笑んだ。

「なんで、知ってんの?」

「梨々のことなら、何でもお見通し!!」
「嘘!!?」
「…………なーんてね!
さっき梨々ん家に行った時、見たんだ。
雑誌にドッグイアしてただろ?」

「え?あ!うん」
「ペンで◯まで印つけてたじゃん!
欲しいのかなって!」

「……/////」
(そうゆうの……反則////)
梨々香は心が揺さぶられ、顔を赤くしていた。


「はい、梨々!
頑張ったご褒美!!」
「え?」

「本当は、ご褒美なんてあり得ねぇけど……
ちゃんと課長との不倫を終わらせた梨々に、ご褒美!!」
小さな箱を、梨々香の手に握らせた乙哉だった。

「…………ありがと」
「ん」
「乙哉」
「ん?」
「ありがとう!」
目を潤ませた梨々香が、乙哉を見上げ微笑む。

「梨々?」

「私、幸せ!!
この10年。
楽しい事もあったけど、やっぱり辛くて悲しいことばっかだった。
不倫は自業自得だけど、ほんと……苦しかった。
乙哉に、また出逢えて良かった!!
ありがとう!!」

「うん!俺も!!
俺に、チャンスをくれてありがとう!!
大丈夫!もう絶対放さないし、一人にしない!!」

お互い、微笑み合っていた。



乙哉のスマホが震えた。
画面を確認すると“スグル”の文字。

「━━━━━━梨々。
ごめん!仕事の電話だからさ、ちょっとここ外すな!
そこのカフェに入っててくんない?」
「うん、わかった!」

梨々香がカフェに入ったのを確認し、乙哉は電話に出た。
「スグル?」
『調べついたよ。梨々香ちゃんの不倫相手』
「もう、不倫してねぇよ」
『わかってるよ。
名前は和多 藤四郎。
◯◯インテリアの広報の課長。
家庭では嫁に頭が上がらない、逆玉男。
ヘッドハンティングされたらしいけど、本当は左遷されて梨々香ちゃんの職場に転職したみたい』
「左遷って、まさか…!!」

『不倫だよ。嫁の親が前回の不倫を隠す為に、左遷をヘッドハンティングって形で転職させたみたい』

「本物の、最低・最悪な男だな……!」

『うん。クズだな。
……………で?どうする?』

「そんなの、決まってんだろ!?」

『地獄行きか……!』



「当たり前!!
俺の梨々を傷つけた落とし前、つけさせる!」
乙哉のスマホを握る手が、ギリギリと震えていた。
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