幼なじみの一途な狂愛
及川のスマホを覗くと………

“◯◯インテリア・広報課長。
あの有名な元・◯◯会社の部長で、不倫男だった!”
という見出しが書かれていた。

「え?前にも、不倫してたの……?」

「ヘッドハンティングって言ってたけど、左遷らしいよ!」
「しかも!奥さん、◯◯会社の会長の娘で奥さんの父親がウチに転職させたらしいよ」

一度アップされた和多の情報は、あれよあれよという間に拡散され……あっという間にコメント欄は荒れていく。

「なんか……酷いね……」
「だよねー!不倫なんて、最低ー」
梨々香が呟き、及川が賛同する。

いや……梨々香が“酷い”と言ったのは、この拡散の仕方とプライバシーも何もない数々のことだ。
確かに、不倫という“最低な”行為をおこなったのは和多だ。

でもこんな仕打ちは酷すぎる。

和多はどんな気持ちでこのホームページを見たのだろう。
自分なら、耐えられない。
自殺する人の気持ちが、わかったような気がした。


「和多さ……いや、課長はどうしてるのかな?」

「あー、依願退職したらしいよ!
で、海外に逃げたらしい」
梨々香の問いに、及川が答えたのだった。


「…………あ、乙哉?」
『梨々ー!!
嬉しい!梨々が電話かけてきてくれたー!』
その日の仕事終わりに、梨々香は乙哉に電話をかけていた。

「今、どこ?」
『光昭の店にいるよ!スグルと飲んでるの!』
「私も、行っていい?」

『え!!?梨々に会えるの!!?
うん!来て!会いたい!!
あ!待って!俺が迎えに行く!
会社前で待ってて!』


会社前で待っている、梨々香。
「梨々ー!」
「あ、乙哉!」
「仕事、お疲れ!!」
「うん…」

元気のない、梨々香。

「梨々、どうした?」
「うん」
「仕事でなんかあった?」
「うん」
「梨々」
「うん」
「キスしていい?」
「うん」
「いいの?」
「うん」

「“俺”だから、いいの?」
「うん」

「………ったく!」
全く、話を聞いていない。
乙哉は、梨々香の頬を包み込み目を覗き込んだ。

「梨々」
「……っえ!?
お、乙哉…!?」

「“キス”していいんだよな?」

「は?
な、な、な…/////」
「今、梨々。
俺が“キスしていい?”って聞いたら、いいって言ったよ?」

「そんなこと、言ってない!!」
「じゃあ……俺の話、聞いてた?」

「………ごめん。聞いてなかった……」
「だろうな…」
「ごめんね!」

「いいよ!
とにかく、バーに行こ?」
頭をポンポンと撫で、乙哉が微笑んだのだった。
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