慶ちゃんが抱いてくれない!
「このままじゃ武蔵君死んじゃうよ!」
「勝手に殺さないで……口の中生臭くて気持ち悪くなっただけだから大丈夫」
「本当に!?具合悪くない?」
「うん…はぁ……口に含まないで一気に喉に流し込めば良かった…どんな味かきになっちゃったんだよね。よく考えたら弟の髪の毛入ってんのに味わったら気持ち悪いな」
「……ん?」
今、一瞬… ?
武蔵君の声が途中から慶ちゃんみたいな声が聞こえた気がした。
「武蔵君?声…変わった?」
「え?変わった?」
「あ………ああぁ!慶ちゃんの声だ!」
武蔵君の声は完全に慶ちゃんの声になっていた。
「マジで?なんか、自分の声と違うのはわかるけど…自分だと慶次の声って分かりにくいな」
「成功したー!よかった!」
「やっぱり今は魔力高まってるのかもな」
「あ!でも、今だけだよ?18歳の誕生日までに慶ちゃんと恋人同士になって慶ちゃんに抱いてもらうんだから!」
「うん…わかるんだけど、あんまり人前で抱いてもらうとか言わないようにね?っていうか、今まで振られまくってんのに、見込みあんの?」
「大丈夫!修学旅行にクリスマスにお正月!バレンタイン!頑張ろうと思えば胸きゅんイベント盛りだくさん!」
「今までもそれらのイベントで振られてるのにめげないね……でもさ、そうすると30歳までしか生きられないじゃん。30っていったら人生まだこれからだよ?真穂のお母さんも俺達が小さい時に亡くなっちゃったしさ…」
「だって、300年も生きたら人生の半分以上も慶ちゃんといられないんだよ?」
「300年生きれば日本人男性の平均寿命約80歳として30で死ぬよりもプラス約50年も一緒にいられるじゃん。30で死んだら小さい頃からずっと好きだった慶次とたった12年しか一緒にいられないんだよ?」
「そうだけど…えっと……それにね!見た目だってみんながおじさんになっても私だけ変わらないんだよ?慶ちゃんと…みんなと一緒年取りたいもん」
「……ま。人生何があるかわからないから一概にどっちが良いのかなんて俺には言えないけどね。300年も生きたらどれだけ時代が変わるかもわからないし、家族や友達の最期の悲しみを何度も乗り越えないといけないツラさは計り知れないよな……愛する人の最期なんて看取りたくないのは慶次も一緒だと思うよ」
武蔵君は最後の方は小さい声で呟くと武蔵君は私の目を手で覆った。
「えっ……わ!?何!?」
「約束忘れるところだった。慶次に言って欲しい台詞募集中」
「……ああああ!見えないと余計に慶ちゃんが近くで喋ってるみたい!えっとね!なんて言ってもらおうかな!」
私は武蔵君に急いでリクエストをした。