慶ちゃんが抱いてくれない!
慶ちゃんが抱いてくれた ~真穂side~
バレンタインデーの午前中。今日は土曜日で学校は休み。
おばあちゃんの家のキッチンで楓ちゃんとチョコレート作りをしていた。
おばあちゃんの家で楓ちゃんの呪いを調べてから今まで掃除の時しかこの家に出入りする事はなかったけれど、お父さんと相談して散らかさない事を条件に最近では私達のたまり場になっていた。
「ちょっとっ!真穂!湯煎ってお湯を入れる事じゃないわよ!」
「え!?そうなの!?」
「今まで慶次君にバレンタインのチョコ作ってあげた事ないの?」
「小さい時にお母さんと作った事あるけど……小さい時だったし……最近までは買ったやつだったかなぁ」
楓ちゃんは勉強は出来ないけど、お料理は上手だった。
バレンタインのチョコをお友達と作ったりするのにも憧れていたから誘ってみたけど、教えてもらう形になってしまっている。
「ま、私がついてるから今年は心のこもったチョコレート送れるわね」
「うんっ!チョコだったらさ、武蔵君の勉強のお供にもなりそうだよねっ」
武蔵君は1月に行われた大学入学共通テストは余裕で通過して、今は二次試験に向けて毎日部屋に閉じこもって勉強している。
楓ちゃんは寂しいだろうけど大事な受験だもんね。
「……真穂。あのさ、ずっと言わなかったんだけどさ」
「うん?何ー?」
「私……武蔵君と付き合ってるんだ……」
「え……?ええ!?」
「そんな驚く事!?」
「だってっ!二人が付き合ってる事知ってるよ!?私、ずっと楓ちゃんが武蔵君と付き合ってる事前提で話してたよ!?」
「どうして知ってるのよ!?言ってないわよ!」
「確かに言われてないけど……楓ちゃんの呪い解けてるし、武蔵君呪い解きに行った日帰って来なかって慶ちゃん言ってたもん。武蔵君は付き合ってもないのにお泊りなんてしないよ?」
そう言うと楓ちゃんは顔を真っ赤にさせた。
「別々の部屋で寝たから!と、とにかく!改めてそういう事だから」
楓ちゃんはそう言ってチョコをすごい勢いでかき混ぜ始めた。