慶ちゃんが抱いてくれない!
桃菜が学校から帰って来るまでの間、夫婦二人だけの時間を全く足りなかったけど過ごした。
桃菜が学校から帰って来ると、いつも休みの日に3人で遊んでいる家庭用ゲーム機でいつもの様に夕方まで遊んだ。
「よしっ!それじゃあ、お夕飯作ろうかなぁ!桃ちゃんと慶ちゃん、何かリクエストある?」
「俺は……真穂が作る物なら何でもいいよ」
「桃はねぇ、えーっと…ハンバーグがいい!お手伝いするよぉ」
「ありがとー…桃ちゃんお手伝い上手だから助かる」
俺はキッチンで、真穂と桃菜が夕飯の支度をする姿をダイニングの椅子に座って眺めていた。
もう…夜になるのか。
一日ってこんなに短いものだったんだな…
「ママぁ、玉ねぎ上手く切れないー」
桃菜は子供用の包丁を使って玉ねぎを持っていた。
「見本見せてあげるから貸して?お手てしっかりネコさんののお手てにしてね」
「こう?」
「そうそう!ふふっ!昔、慶ちゃんに教えてもらった時のこと思い出しちゃった」
「ははっ……そんな事あったな?今、俺も思い出した」
桃菜は玉ねぎを切りを終えると、服の袖で目を擦った。
「……ママ、ごめんなさい……玉ねぎ目にしみちゃった……顔洗ってくる……」
「……ん。ママ作っておくね」
桃菜はキッチンを出て、洗面所へ走って行った。
俺はすぐに桃菜の事を追い掛けようと思ったが、肩を震わせながら料理を続ける真穂の後ろ姿を見ると立ち往生してしまった。