慶ちゃんが抱いてくれない!
私は恐る恐る、腕を掴んだまま幼馴染の慶ちゃんを見上げた。
すると、慶ちゃんは私を見てニッと笑った。
「花沢真穂(ハナザワ マホ)さん………俺は、真穂の事絶対抱かねぇ」
「ええぇ!!慶ちゃん、小さい頃私の事お嫁さんにしてくれるって言ったよ!?」
「いつの話してんだ!?子供の頃そんな純粋な俺に蛇の頭とかトカゲとかグロテスクなもん色々溶かした変な液体飲ませようとした女を抱けるかよ!」
「あの二人痴話喧嘩?抱くとか…すごい会話してるな…」
大きい声で言い合ってたから廊下を通りかかる生徒から注目を浴びていた。
それに気付いた慶ちゃんは舌打ちをして不機嫌そうな顔をして私の腕を掴んで近くの非常階段に移動した。
「人が行き交う場所で抱いてとか言うの止めろ!俺もいつも通り言い返したのも悪いけど」
「だって慶ちゃんが抱いてくれないんだもん!こんなに好きなのに!」
「だぁかぁらぁ!何度も抱かねぇって言ってんだろ!そもそも俺達付き合ってすらいねぇのにすっ飛ばし過ぎなんだよ!」
「ぶー!だって付き合ってもくれないじゃん…付き合ってくれなくてもいいから抱いて欲しいんだもん」
「そういう事俺以外の奴に絶対言うなよ?…っつーか、先に学校行くならメッセージ入れろよ!真穂の父ちゃんが気付いてくれなかったら遅刻してたぞ」
「昨日の夜やったタロットでね、午前中に家から西の方角で告白すると上手くいくって出たの!」
「アホか。学校は真穂の家から東だろ」
「えっ!?嘘!?」
「っつーわけで、真穂とは付き合わないし抱かねぇ」
慶ちゃんはそう言って鼻で笑って私の頭をポンと撫でると非常階段のドアを開けて教室に向かって行ってしまった。
また駄目だった…。
慶ちゃんに告白したのもう何回目だろう?
はぁ…今日も慶ちゃん格好良かったな…。
私も慶ちゃんの後を追って教室へ向かった。