慶ちゃんが抱いてくれない!
「私に言われても~?代々伝わる魔女の本に書いてあっただけだし。今は性的な物には蓋しがちだけど、昔からの物事は大抵そういうのが絡むものだよ。ま、男女の愛の行為は昔も今も変わらず特別な物だからかもね?ところでその呪い…花沢さんがそんな魔力を使いこなせるわけないだろうし、花沢さんの身内にかけられたの?」
「…多分、真穂のおばあちゃんだと思う。子供の頃よく遊んでくれてたからな」
「ふーん……ねぇ?花沢さんとの事。拒否するばかりじゃなくて誕生日が来る前にもう少しよく考えた方がいいんじゃない?」
「そんなの…言われなくたってもう何年も考えてるよ……真穂が300年不老のまま生きる事を望んでない事もわかってる…でも…それでも俺は真穂にそんな早く死んでほしくない…。俺と愛し合う事で寿命が縮まるなんて…俺が殺すようなもんだろ」
目から涙が溢れて来る…。
人前で泣いたのは子供の時以来だった。
「慶次君…ちょっと動かないでね」
「…あ?」
南條はそう言うと、突然俺の目尻に何かを押し当てて来た。
「取れた!」
「何だよ!?」
南條の手には小瓶…?
「ふっふ…若い男の子の涙!これ、使った魔法薬で結構便利なのあるんだけど、あんまり魔女の事口外出来ないし、なかなか採取出来ないんだよね~!もらっておくわ」
「この女……!人が真剣に話してる時に何してんだよ!?」
「ごめんごめん~!そうね…言っておくけど。300年生きるのって大変だよ。こんな私だって何度も自ら命を絶とうと思った事何度もあるよ?特に最初の100年がすごくツラかった。一緒に大きくなった友達や恋人はどんどん歳を取っていく。姿が変わらない私だけ取り残されていくの…。同じ所にも長くは住めないし、また恋をして結ばれても愛する人にはどんどん置いていかれるし…だまされる…事も」
「…」
「……もう少しだけよく考えてあげて?」
南條は俺の肩をポンポンと叩くと、扉の方へ向かった。
「あ、そうだ!あと、そのモテる呪いね?エッチしたら消えるけど、その相手の子以外は一生愛せなくなるから気を付けてね~」
それだけ言い残して出て行った。
そんなもん。
気を付けるも何も真穂以外考えてないからな…。
呪いの事を南條から聞いて思い出した。
小学校低学年くらいの頃、昼間に放送されていたメロドラマを真穂と見ていた時にドラマに影響された真穂がキスをしてみたいと言ってきた。
俺は真穂の事が好きだったし、その頃は別にしてみたいならしても良いと思ってキスをしようとすると真穂のおばあちゃんに止められた。
その時、いつも優しい真穂のおばあちゃんに少し強い口調で生半可な気持ちで真穂に手を出したら駄目だと言われた事がある。
女に言い寄られて、それに靡かれたら一生真穂の事を愛せなくなる。
知らないうちに真穂のおばあちゃんに試されてたって事か。
そんな心配しなくても俺は……