慶ちゃんが抱いてくれない!
慶ちゃんとキスして…ふわふわしてて……武蔵君に結婚報告して………?
瞼が重い…。
「……ん」
「起きたか?」
目が覚めると、私は慶ちゃんの膝枕で横になっていた。
あれ?私、寝てたの?
体を起こそうとすると、慶ちゃんが私の背中を支えてくれた。
「ぅー……頭重い……」
「水飲むか?」
「ん」
慶ちゃんはペットボトルのお水を飲ませてくれる。
お水を飲んで、顔を上げると慶ちゃんと目が合った。
………あ………そういえば、私……慶ちゃんと……キッ……!?
ここに来るまでの経緯は曖昧なのにその事だけはハッキリ覚えてる!
突然鮮明に思い出して、顔が熱くなった。
「け、け、け、け、慶ちゃん!私はなんという事を……まるで野獣…」
「ふッ…誕生日までに俺とヤるとか意気込んでる奴の反応かよ」
慶ちゃんはそう言って優しく笑った。
アレ?慶ちゃんが優しい……いや、本当は優しいって知ってるけどね?
「それは、私を……抱いてくれるのですか…?」
「そんな事一言も言ってねぇだろ」
「うぅ…」
「それより、体調どう?」
「少しだけ頭痛いけど…大丈夫…」
「なら良かった。今、6時間目の授業中だから授業時間終わったら帰ろう」
周りを見ると、私と慶ちゃんがいた場所は化学部の部室だった。
部室というよりは、部活動は実験室でやるからほぼ物置だけど。
あ…慶ちゃん、ずっと付いててくれたんだ…
「…慶ちゃん、また巻き込んじゃってごめんなさい」
「今に始まった事じゃないからいいって」
ふと慶ちゃんを見ると、ネクタイを緩めている首元になんとキスマークが出来ていた。
「け、慶ちゃん!このキスマーク!!わ、私がやったのですか!?」
「あー結構吸われた」
「歯型まで出来てる!キスの領域越してる!うあぁ!本当にごめんね!」
「いいって……なんつーか……俺も…真穂のキスの空気に呑まれて…あんな時だったのに…真穂にキスしたし…」
慶ちゃんはそう言うと、腕で顔を隠した。
耳…赤くなってる…。
「慶ちゃん…今日の放課後デートしよ?買いたい物あるんだぁ」
「普通に買い物って言えよ…」
「男女2人で出掛けるのはデートって言うんですー!デートって言葉ちゃんと調べてみて!」
「何でわざわざそんな言葉の意味調べてんだよ?病み上がり?みたいなもんだし、今日は大人しく帰って休んだ方がいいんじゃねぇの?」
「もう元気だから大丈夫だよー!ギリギリだとゆっくり選べないじゃん」
「何買うんだ?」
「週末のお母さんの命日にお母さんにプレゼントあげたいなって思ってて…一緒に選んで欲しいなって」
「あぁ。来週末だったな…」
そう。
私のお母さんは5年前の32歳のある日。
他界した。
お母さんは魔力の弱い魔女になってしまったから寿命が30歳くらいというのは知っていたけど、勝手に30歳ぴったりまでしか生きられないと思っていたから30歳越えても生きてるし寿命が30歳なんて嘘なんじゃないかと思っていた。
それに前日まで元気だったから…なかなかお母さんの死を受け入れることが出来なかった。
あの時も慶ちゃんと武蔵君にすごく支えられて…悲しみを乗り越える事が出来た。
あれからもう5年も経つ。