慶ちゃんが抱いてくれない!
真穂のお母さんの命日。
この日は真穂の父ちゃんの両親とうちの家族で墓参りへ行き、真穂の家でみんなで食事をした。
これは毎年恒例となっていた。
そして今年も真穂のお母さん方のおばあちゃんが来る事はなかった。
今日なら真穂のおばあちゃんが来るかもしれないと思ったけど……
夜になると大人達は良い感じに酔っていて、真穂と兄貴は楽しそうにその輪に入って談笑をしていた。
32で生涯を終える事になった真穂のお母さんの命日……俺は一日中ずっと上の空だった。
南條の話を聞いて今まではただ真穂が早く死ぬのは嫌だ以外の考えはなかったが……。
……少し外の空気吸いに行くか。
俺は静かにその場を離れて、真穂の家の庭へと出た。
すると、先ほどトイレにたった真穂の父ちゃんが庭のベンチに座って一人で煙草を吸っていた。
「あ、慶次君…」
「すいません…俺、戻ります」
「いや……ちょうど話し相手が欲しいと思ってたところだから、おじさんの相手してくれないか?」
「……はい」
真穂の父ちゃんはそう言って、煙草の火を消した。
真穂の父ちゃんが煙草を吸ってるなんて珍しい…